怪しい通販じゃないですよ? 文面は完全にそれだけど……というか、当たり前ですよね、彼氏募集掲示板は彼氏を探すための場所なんだから。

 でも、友達がよく言うんです。
「ああいうのって実際にできるの?」
 と。おいおい、実際にできた人間が目の前にいるのにそういうこと聞く? そういうときは決まって、
「いやここにいるでしょう、実例が」
 と答えます。

夢のための糧

 でも、そういう私も最初は懐疑的でした。じゃあどうして彼氏募集掲示板を使い始めたのかというと……不純な動機で申し訳ないのですが、子供の頃からの夢のため、でした。

 子供の頃から小説家になるのが夢で、そのために色々な本を読んだり、実際に書いて投稿サイトに投稿して色々な方からの意見を頂いたり。実際に新人賞に応募したこともあります。結果はといえばあえなく一次選考で落とされましたが。
 今小説界隈では――この際ですからはっきり言ってしまいますが、私がなりたいのはライトノベルの作家ですので、正確にはライトノベル界隈ですが――異世界転生物が流行りです。でも私は異世界で生まれ変わって暴れまわりたいわけじゃあない。私が書きたいのは胸焼けするほどのラブロマンスなんです。

 ところが、私には残念なことに恋愛経験がなかった。それまでに二度ほど告白されたことはありましたがどちらも丁重にお断りしました。
「私、自分の夢を追うのに忙しいんだ。だから付き合えない」
 ……思い返してみると、くさいですね。第一、付き合いながらでも夢は追えただろうに。何をやっているのやら。

 話を戻しましょう。そんな、彼氏を夢のための糧と考えていると捉えられても仕方がない動機では、そう簡単に彼氏なんてできるはずもなく。こちらでもしばらく、私は一次選考に落ち続けていました。いえ、そもそも応募要項すら守っていなかったといってもいいでしょう。

 

失敗と転機

 そんな私にも声をかけてくれる人はいました。ところが、そこでも私の不純さが炸裂します。声をかけられてなお、私の頭の中は『小説のネタ>彼氏作り』だったのです。
「これまで何人と付き合ってきた? 一番熱い経験は? 他人が経験していそうにない出来事はある?」
 まるでゴシップ記者の強引なインタビュー。そりゃ誰だって引きます。実際、そんなことを繰り返しているうちに何処かの裏掲示板に『彼氏募集掲示板にいるこの女は地雷』とでも書かれたのでしょう、私にお声がかかる回数は時間を追うごとに減っていきました。

 転機はいよいよ誰にも話しかけられなくなってきていた頃。丁度彼岸前くらいで、照りつける日差しが鬱陶しいことこの上なかったことは覚えています。その頃になると私のほうも彼氏募集掲示板に登録しているということを半ば忘れつつありました。というか、その通知が来るまで本当に忘れていました。正直に言うと、面倒にすら感じ始めていたと思います。
 この返信が済んだらもう彼氏募集掲示板なんて退会しよう。そう考えてこれまでと同じ、いや、これまで以上に突っ込んだ”質問状”を送りつけた私は、まあどうせ返事なんてこないだろうなんて思いながら好きな恋愛小説を読みふけり始めました。
 返事は結構早かったと思います。というか、先程も書いたとおり返事が来るとは思っていなかったのでそれはもう驚かされました。とはいえ、開いてみるまでは、
「はてさてどんな罵詈雑言が書かれていることやら」
 なんてことを考えていたのだから我が事ながらもはや手に負えません。ところが、そんな私の意に反し、そこに書かれていたのは私の”質問状”に対する丁寧な返答。流石に目を疑いました。なにせ、その質問の中にはこれまでの性体験についても含まれていたのですから。
 当然、なぜ答えてくれたのか気になった私は更に返事を重ねることになります。
「どうして初対面の人間にここまで答えてくれたのか」
 そんな文面でした。このときも返事は早くて、
「だって聞かれたし、答えていいと思ったから」
 ――ほほう、こやつ中々面白い。

 それから、私と彼のやりとりは始まりました。(続く)