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ようやくの第一歩。でも

 何度かやり取りしてみると、彼氏募集掲示板を通じて連絡をくれた件の彼は、私の予想をいい意味で裏切ってくれる人間でした。
 私の夢について話したときには読みたいと言ってくれたので、直近の応募作を送ったことがあります。実は、どうせ社交辞令だろうだなんてことを思っていて、だから二時間くらいして返信が来たときは驚きました。なにせ、その返信内容は間違いなく私が書いたものを読んでいなければ書けない内容だったのですから。『面白かった』とか『つまらなかった』とかのざっくばらんとした無味乾燥としたものではなく、このときのこの人物の心情がどうだった、とか、この景色の描写がどうだったとか……
 そういう風な感想をもらったことは過去にもありました。投稿サイトに書いたものを投稿していた頃の話です。が、面と向かって(というと少し違いますが)言われたのははじめて。私を私として認識して突っ込んだ感想をくれたのは、彼がはじめてだったのです。そのときになってようやく、私は彼に直接会ってみたいと思うようになりました。

 ところが、ここでまた別の問題が立ちはだかることになります。

 

遠いな……物理的に

 言うまでもなく彼氏募集掲示板には全国各地から彼氏を求める女達が集います。そして、それを狙う(というと少々語弊がありますが)男達も。となると当然相手が遠方の人間であるなんてザラですよね。
 私の場合もそうでした。私は福岡の、それも周りを山で囲まれた僻地で暮らしていて、彼は千葉。ちょっと車で、とか、電車ですぐなんて距離ではありません。
 よく、遠距離恋愛は長続きしないといいます。まあ私の場合はそもそもまだ恋愛感情らしきものは持っていなかったのですが。それでも、いくら会いたいと思っても現実の距離が壁となって立ちはだかってくると流石に来るものがありました。

 

いってら……いや待て

 交流が始まって一年近く経とうとしていたある日。友人が某有名テーマパークに行くという話を聞きました。
 それまでの私ならさらっと「いってらっしゃい」と見送るところ。そのときの私もそのつもりで――しかし、ふと気づきます。
「私も行っていいかな?」
 その瞬間の友人の顔は今もよく覚えています。まるでこの世ならざるものを見るような目……まあ、確かに私が彼女の立場だったら、同じような顔をしていたことでしょう。
 勿論別段そのテーマパークに興味があったわけではありません。ただ、その立地を思い出して、ハハッ、いい機会だと思っただけ。もっとも、『彼氏募集掲示板で知り合った人と会いたいから』なんて正直に話したらなおとんでもない目を向けられそうだと、真実は話さずに理由はぼかして伝えましたが。

 そう、そのテーマパークとは、あのデ。◯◯ー◯◯ドです。

 友人からの快諾を得て準備や計画を立てるうちに、気づけば出発の翌日。ああようやく会えると妙に浮ついている自分に気がついて、もしかしてこれが恋というやつかなんて思い至ったときにはもう私は機上の人でした。

そして今に至り……

 彼氏募集掲示板での交流から現在に至るまで二年。今私は千葉にいます。実際に会って恋を自覚してからの行動力は我ながらあっぱれと言わざるをえないものでした。帰ったその日にはもう向こうに引っ越すことを決めて家を探し始めていましたし(最終的には彼と家賃を折半して同棲することになったんですが)、引っ越しが済んだ後はすぐにバイトを始めました。勿論夢を諦めたわけではないですし今でも書き続け応募し続けています。
 先日、初めて一次選考を通過しました。まあそれより先には辿り着けず終いではありますが、それでも私にとっては大きな一歩です。

 興味本位以前にネタ帳程度の考えで利用を始めた彼氏募集掲示板がまさかこういう結果を生むなんて、本当に、人生はどう転ぶか分からないものです。